言葉選びの大切さ

今から2年ほど前の話になりますが、息子がウイルス性脳炎 髄膜炎に罹り危篤状態になりました。

息子は風邪が長引いていて、診察を受けた病院から他の病院で精密検査を受けるように紹介状を書いていただき、お正月休みの期間で病院が休みの間で自宅療養している間に意識不明になって倒れたのです。

意識のない状態で救急車で搬送されてそのまま入院することになり、次に姿を見た時にはICUの中で体中に数え切れないほどの点滴の管をつけられて人工呼吸器の力でかろうじて息をしている眠ったままの息子でした。

幸い4日目に意識が戻り、看護師の方から「ご両親から何か呼びかけてあげて下さい」と言われ、主人が「〇〇お父さんだよ。わかるか?」と呼びかけると、息子はうっすらと目を開けてゆっくり、少しだけコクリとうなずきました。

続いて私が「〇〇お母さんだよ。わかる?」と呼びかけると、とたんにピーと言う音と共に心停止してしまいました。

パニックになる私と息子の間に看護師さんが割って入り、ペシペシと息子の腕を叩き、「〇〇君~、起きなさ~い。ご両親が来てくれたよ~!ほら頑張れ~!がんばれ~!!」と呼びかけると、再び息子の心臓が不規則に動き出しましたが、疲れているようでそのまま眠ってしまいました。

私が話しかけたから?私のことが嫌いだから心停止?と、おろおろしている私に看護師さんは、「ずっと寝ていたから心臓も疲れているんですよ。お母さんが来てくれたから、安心して休みたくなっちゃったんですね」と声をかけてくれました。

「安心して休みたくなった?」私のことが嫌いだからじゃなくて、安心したからなんだ。良かった・・・もし、その時の看護師さんの言葉が無かったら、私はずっと自分を責めて泣き続けていたかも知れません。

脳炎と髄膜炎を併発した場合、後遺症が残る確率がとても高いのですが、幸いにも息子は奇跡的に回復し、今も元気に過ごしています。

退院した息子に「生きていてくれてだけでも嬉しいんだよ。ありがとう」と声をかけました。

人間はテレパシーが使えないので、ちゃんと言葉に出さないと相手に伝わりません。

お子さんに「生まれて来てくれてありがとう。愛してるよ」と、たまには声をかけてあげて下さい。

「ダメな子だ」とか、「なんで出来ないの!」とか、いつも否定の言葉がけばかりしている育児よりも「上手にできたね」「すごいね!」と言って育てる方がずっと楽に良い子に育ちます。

お子さんのお母さんに認められたい欲求は成人しても続きます。

就職活動の時は、両親の就職先を参考にしてどんな仕事が自分に向いているのか模索するでしょう。就職活動で疲れて帰って来た時は、「お疲れさま。大変だったね」と、言ってあげることで、婚活で迷った時は、「あなたの選んだ人なら大丈夫。自信を持ってね」と、声をかけられたら自己肯定感につながります。

人はどん底にいる時に心に光が差すような言葉に救われたら、おそらく老人になってもその時に感じた感情を覚えているでしょう。

いつも一緒にいるんだからとか、家族なんだからとか、子どもはきっとわかってくれているだろうと思っていても、愛しているという気持ちは、たまにはしっかり言葉に出して伝えなければいけないものなんだと思います。