ADHDと仕事について

ADHDの子どもは小さいころから集団行動が苦手です。幼児期は目立ちませんが、幼稚園に入園して集団生活が始まった頃に他の子と同じ行動が出来ないことで、「あれ?なんでだろう?」と、お母さんが気付くのではないでしょうか?

幼稚園ではみんなと一緒に体操が出来ない(体操をしたくないから)、順番が待てない(友達が遊ぶ時間を待っていられない)、泣いたり暴れたりして先生の指示に従わない(注目を集めたい)などで、手がかかる子と周囲から認識され始めます。

日本の教育現場ではアメリカと違い生徒の個性を伸ばすよりは、協調性を大事にしますので集団行動が出来ないと先生から叱られることになります。

みんなと同じように1列に並びなさい。みんなと同じように授業が始まったら席に着きなさい。

最初は優しく注意していた先生も、何度言っても言うことを聞かないADHDの生徒にやがて「なんでみんなと同じように出来ないんだ!」と怒り出します。

ADHDの子ども本人は、本当はみんと同じように行動したいのです。でも、1列に並ぼうと思っていても、地面にいる蟻が気になって踏まないように地面に集中してフラフラ歩いてしまったり、授業が始まる前に読んでいた本の続きが気になってなかなか本を閉じることが出来ずに席に着けないだけなのです。

ADHDの子どもは興味を持ったことに対して探求心が非常に強いので、知能指数が高いのではないかと誤解されがちです。仮にゲームなどで戦国時代に興味を持てば教師が舌を巻くほど完璧に戦国大名や歴史背景をスラスラ暗記できたりするためです。

これだけの暗記能力があるのなら勉強もできるに違いないと、教師も親も期待してしまうかも知れませんが、ADHDの子どもは興味を持ったことしか勉強しないので歴史のテストは満点でも、興味が無い国語は文章が読めないというような極端な成績になります。

ADHDの子どもは、周囲からの過度の期待を背負うことが出来ません。「なんであれは出来るのにこれは出来ないんだ」と、教師や親から叱責され続けても、自分の気持ちを上手く表現できないので、言っても無駄だから話しても無駄だから、どうせ大人はわかってくれないから話さないという選択です。

たいていの子どもが教師や親からの叱責を受けすぎて、その場だけやり過ごせればいいやと外部からの音をシャットダウンし反省したふりだけして、叱責されている理由を全く理解しようとしないため、何度も同じ間違いを繰り返します。

残念なことに成人後に就職した場合でも、上司から叱責されると学生のころと同じで、自分がなぜ叱責されているのかを理解できないのです。そして自分が次にどういう行動をしたらよいのかを予測できません。

ADHDの人は成人しても先のことを予測して行動したり、空気を読んで自分から謝るという行為が苦手です。仕事で失敗したとしても「叱らないで注意する」ことを心掛けなくてはいけません。

就職して間もないころは何度も注意されるかも知れませんが、やがて半年ほどで職場の仲間に無視されたり、いじめにあってうつ病になり、会社にいられなくなる人が出てきます。これが2次障害です。

しかし、ADHDの人が社会人に向いていないのかと言うと全くそんな事は無くて、消費者の行動分析をやらせてみたら社長賞を取るほどの成績だったり、電話番はできないけれどもプログラミングは、ずば抜けて得意だったりします。

ADHDの人の未来はお母さんや上司がADHDを理解して、その人の持っている秀でた面を見抜き、伸ばすことが出来るかどうかにかかっています。