引きこもりを外に出すきっかけ

引きこもっている人には、例えば職場でのパワハラやリストラ、学校での虐めなど、何か原因があって外敵から自分の体を守るために引きこもっている人。

学校で勉強するのが向いていないから退学したとか、職場の人と馴染めないから退職したなど、何となく生きるのが面倒になってしまって、自宅で小休止しているタイプの人がいると思います。

引きこもるには、ものすごく忍耐力が必要です。健康な人に「誰とも口をきかずにたった1人で1年間宇宙船で過ごす実験」の求人を出しても、かなりの報酬を支払わなければ人は集まらないでしょう。

引きこもりの人は、家族ともほぼ口をきかずに、6畳くらいの部屋から1歩も出ずに、まるで修行僧のように人生についてじっくり考えています。

健康な人に「引きこもりの人と同じことをやってください」とお願いしても、おそらく無理でしょう。健康な人は、悩みがあれば友達や家族に相談したくなりますし、イライラしたら甘いお菓子を買いに行きたくなります。

健康な人には、たくさんの欲望があります。流行りの歌が聞きたい、新しくできたカフェに行きたい、恋人が欲しい、大学に行きたいなどは全部欲望です。

引きこもりの人にはこの欲望がまったくないのです。今日の夕飯に食べたいものがありません。新しい服も恋人も欲しくありません。生きたいという欲望がないのです。だから数年単位で部屋の中だけで過ごせるのです。

極端な例えですが、生きたい欲望が無い引きこもり状態の夫に、「男が仕事に行かないでこれからどうするつもり?」とか「収入が無くなったら子どもの教育費はどうなるの」と、働かないことを妻がなじったらどうなるでしょう?夫を追い詰めるだけです。

妻は自分の希望を夫に話してはいけないのです。家族の希望を引きこもり本人に伝えないことがポイントです。

子どもが引きこもっている場合も同じです。お母さんから引きこもっているお子さんに、「大学をやめてどうするつもり?」と疑問形でいったとします。

しかしそれは「大学に行きなさい」もしくは、「大学に行かないなら働きなさい」といっているのと同じです。

引きこもりの人に、自分の希望をいってはいけないのです。では、希望はいわずに引きこもりの人に欲望を持たせるにはどうしたら良いでしょう。

人間の欲望は自然に湧き上がるものでは無くて、他人から得るものです。

健康な人は、テレビのコマーシャルを見て新作のアイスクリームが食べたくなったり、マイホームが欲しくなったり、海外旅行に行きたくなったりします。

テレビの旅行番組を見て、ハワイに行きたいな、ワイキキビーチで泳いでみたいなと思うのは、他人から与えられた情報で自分も海外旅行を体験してみたい思う欲望です。

引きこもりの人は、外部との接触がないので欲望に結びつく情報がとても少ない状態です。まずは、他人と接触させるのがベストな方法です。

最初は、SNSなどで同じ悩みを持つ人が自由に語りあえるコミュニティや、同じ悩みを克服した人の話が聞けるコミュニティがおすすめです。

メールやチャットなどで外部の人と話せるようになると、情報がどんどん入ってくることになります。引きこもりを克服して社会復帰した人の話などを聞くことによって、目標が見えてくる場合があるのです。

引きこもりに強制は禁物です。社会復帰までには、数年かかってしまうかも知れません。でも、お母さんが何もしなかったらさらに引きこもりが長期化します。長期化すればするほど社会復帰は難しくなります。

お子さんの人生は自分で決めさせてあげてください。不登校になったから全寮制の学校に入れるとか、スパルタ式のヨットスクールに入れるのとかは、お子さんのことを愛しているのならやめていただきたいです。