プロのママはいません

ママさん政治家とかママさんゴルファーとかは耳にすることが有っても、プロのママっていないんです。

赤ちゃんをたくさん産めることがプロではないし、保育士さんでも子どもの成長過程の長くて数年間をお世話するだけです。赤ちゃんを産んで成人するまで育てるプロフェッショナルはいないんです。ママは全員が初心者なんです。

でもなぜか、みんな妊娠が分かったとたんに「私は立派なママになるんだ!」って決意して頑張っちゃうんです。

理由は人それぞれで、「自分のお母さんのような優しいお母さんになりたい」って思っている人や、「自分のお母さんのようには絶対にならないぞ!」って決心している人もいます。

いざ出産をむかえてみると、赤ちゃんの産み方なんて誰も教えてくれなかったから、自分が上手に産めたのかも分からないし、他の人より難産だったのか安産だったのかも分からない。

出産の時の呼吸法1つをとっても、ちゃんとやったつもりだけど、「騙された!こんなに痛い予定じゃなかったよ!本当に効いてるの?激痛なんですけど!そもそも産婦人科の先生が男性じゃん!!呼吸法をやれば痛くないって言うけど先生、赤ちゃんを産んだことないじゃん!」などと、ほぼパニックになっていたり。

陣痛に耐えながら、なにがなんでも呼吸法を続ければ痛くない筈だと思い込もうとして、痛すぎて出来ることなら気絶したいけど、ここまで(頭が下がって)来たからにはもう戻れない!出すしかない!と唸り声をあげて息んでいたり。

テレビドラマの出産シーンのように額に、汗をかきながら30分くらい息んだら、玉のようにかわいらしい赤ちゃんが生まれる想像だったのに、陣痛が丸2日間続いたり。立ち合い出産で赤ちゃんが産まれた感動の瞬間なのに、旦那さんがへその緒を見て、あまりのグロテスクさに失神したり。

決してきれいごとだけでは語れない激闘の時間だったと思います。それぞれの出産でショートムービーが撮れそうなドラマが有ったのではないでしょうか。

出産後は体力を消耗しきって疲れ果てているのに、授乳室に集められて一斉に授乳や沐浴指導を受けて、体の痛みと寝不足状態のまま退院です。

自宅に戻ってきた途端に、赤ちゃんにばい菌が付いたら大変だからとあらゆる物を消毒したり、部屋中を掃除しまくったり、授乳後のゲップが出ないからオロオロしたり。

赤ちゃんのことを大切に育てたいあまりに、祖父、祖母や他人に抱っこさせたり触らせるのが嫌だったり、反対に旦那さんが何もしてくれないと不満だったり。

育児の本には、赤ちゃんは1才の誕生日の頃に独り立ちすると書いてあるのに、なんでうちの子はまだハイハイなの?とか、もう断乳する時期って書いてあるのに泣いて嫌がるのはどうしたらいいの?とか、夜泣きがひどいのはなんでなの?とか、分からないことだらけなのが普通です。

最初は愛しい我が子のためなら、自分のすべてを犠牲に出来る!と思うかも知れません。でもね、人間だからママだって疲れるんです。だって、3時間おきに授乳するんですよ?寝不足になるに決まってるじゃないですか。

からだが疲れ切って赤ちゃんが可愛いと感じなくなったり、家事も育児も何もしたくないと感じていたら、あなたは育児ノイローゼか産後うつになっているかも知れません。車に例えるとガス欠で動けなくなっている状態です。

現代は核家族化が進んで、お母さんが1人きりで育児をするワンオペ育児がほとんどです。昔とは違って赤ちゃんの祖母の世代も働いている時代なので、赤ちゃんを預かって貰ったり、育児のアドバイスを貰うことも難しくなっています。

育児が辛くて仕方がない。子どもを愛していけるか自信が無いと思ったら、専門家を頼ってください。ガス欠で動けないのだからレッカー車を頼むようなものです。

初めての子育てなんだから、すべて完璧に出来なくても良いんです。あなたは子どもの頃から真面目で頑張り屋さんではなかったですか?真面目な人ほど、なんでも1人きりで頑張って何とかしようとしてしまいます。

理想のママは、「家事も育児も完璧にやって、なおかつ旦那さんの為にいつも綺麗でいたい」とか思っていたら、危険信号です。すっぴんで、ジャージ姿で育児に奮闘していても良いんです。

すべてが完璧なママはテレビドラマの中にしかいません。ママは初心者で当たり前です。プロのママはいないんです。頑張り過ぎないでくださいね。