困ったちゃんは境界性パーソナリティ障害かも

高校時代の友達に「困ったちゃん」のCちゃんが居ました。特に仲が良かったと言う訳ではないのですが、私と同じ部活のNちゃんを独占していないと不機嫌になる子でした。学校では姉御肌でジャイアンの様に少し威圧的な態度をとるCちゃんは、その態度とは裏腹に友達を作るのを苦手に感じていたようです。

私は高校1年生の時から美術大学を目指していたので美術部と、ダンス部の2つ部活を掛け持ちしていました。

Nちゃんとは同じクラスで部活もダンス部で一緒だったので、部活動の帰りにアイスクリームショップに立ち寄ってから帰宅するのが習慣になり、入学して直ぐに1番の仲良しになりました。

Cちゃんは、Nちゃんと帰る方向が同じだったのですが、部活には所属していなかったので、週に何日かは放課後の教室で勉強をしながらNちゃんの部活が終わるのを待っていました。

ですがCちゃんは、Nちゃんに「部活が終わるまで待っている」と伝えることは出来なかったようで、下校で私とNちゃんが並んで歩いているのに気づくと走って追いかけて来て私たち2人の間に入り、Nちゃんの腕を引っ張って「一緒に帰ろう!」と言って強制的に連れて行ってしまうようなことが何度もありました。

高校生ですので、部活が終わってからダンス部のみんなで「何か甘いものを食べに行こう!」という日もありました。ですが部活中にそんな話が決まった時は、Nちゃんが誰かに伝言をお願いして必ずCちゃんに「今日は一緒に帰れないから先に帰って」と伝えるようにしていました。

1度、Nちゃんに予定があってCちゃんと一緒に帰れないと話した時に、「せっかく待っていたのに!Nなんて、もう友達じゃない!」と激怒して大声で怒鳴りちらすことがあったからです。

Cちゃんは、1学期の頃はみんなに「友達になろう!うちに遊びに来なよ!」と積極的に声をかけていて、私も何度か誘われたのですが、放課後は部活が忙しくてNちゃんと2人揃って行くことができたのは2学期の期末テスト前の部活動禁止期間になってからでした。

その頃のCちゃんは、クラスの友達が子供っぽく見えるのか「次元が違うから」という理由で誰とも仲良くなろうとはしていませんでした。気に入らないことが有ると大声で怒ったり、みんなの悪口を言いふらすので孤立することが多くなって仲の良い友達はいませんでした。

そんな頃、私とNちゃんがCちゃんの家に初めて遊びに行った時、彼女は部屋に入るなり手首の包帯をほどき始め、数日前にカッターで切ったという傷痕を見せられました。現代と違って当時は、リスカなんて軽い言葉はありません。あったのは自殺未遂という重い言葉です。

Cちゃんは、手首の傷を見せながら「私がNちゃんと仲良くなれないのはあんたのせいだ!死んで欲しくなかったらもうNちゃんと仲良くしないで!死ぬ時はあんたの名前をメモに書くから!分かったらとっとと帰れ!」と言い、私を家から追い出しました。

それ以来、Nちゃんを独占したCちゃんは明るくなり、生活も派手になりました。きっちりとお化粧をし、女子大生のふりをして週末のたびに群馬県から都内のクラブ通いをしていて、都内に住む大学生の彼氏がいるとクラスのみんなに自慢していました。

田舎の進学校の女子高校でしたので彼氏がいる学生は少なくて、いたとしても地元の同級生が普通でしたので、東京の大学生と付き合っているCちゃんは、ファッションリーダーのような特別な存在でした。

その後Cちゃんは異性関係が荒れて、何か上手く行かないことが有るたびに、何度もNちゃんに「今すぐ死んでやる」と、夜中でも電話をかけてきたり、実際に何度も「Cちゃんがリストカットをして救急車を呼んだので直ぐに来て」とCちゃんのお母さんから呼び出されてタクシーで病院に駆けつけなければならないことがあったようです。

改めてCちゃんの症例を見てみると、境界性パーソナリティ障害なのではなかったかと思います。

境界性パーソナリティ障害は、本人に自覚症状がある事はあまりありません。突発的にリストカットをしたり、夜中に「死んでやる!」と自殺予告の電話をかけて来て彼氏や親を困らせたり、異性関係が自由奔放になって、ヒモ的な男性を好きになりがちになったり、からだを壊すような過食をしたり、思い通りにならないことがあると衝動的に暴れて物を壊したりします。

昔でしたので、Cちゃんの場合は病院に通院することもなく「思春期だから仕方がない。困った子だ」で済まされてしまったのではないでしょうか。

境界性パーソナリティ障害の人は、「これが私なんだ」と言う統一された確かな自分を持っていないため、大変不安定になりがちです。その不安定さから、他人にいらだちを感じて怒鳴ったり、見捨てられるのではないかと強い不安を感じたりします。

女性の場合は、年齢が進むにつれて困った行動が収まる事もありますが、本人に自覚症状がない場合が多いので、薬物の過剰摂取、リストカットなどを見つけたら心療内科を受診させてください。自殺予告など他人を巻き込むような困った行動を繰り返すのなら、薬物療法と心理療法、社会療法を組み合わせた治療がお勧めです。