愛着障害に悩む人に観て欲しい中国ドラマ

中国ドラマを100本以上観た心理カウンセラーがお薦めするイチ推し作品

星漢燦爛(せいかんさんらん)

将軍家に生まれた女主人公(チャオ・ルースー)は、両親共に将軍だったことから、戦地に連れていくことが出来ず、生まれてすぐに実家に預けられた。

将軍として10年以上戦地に赴任したまま帰ってこない長男夫婦。祖母は長男のことは溺愛しているが、後妻でありながら家庭を守らず、戦地に行くために赤ちゃんを置いて行った嫁を毛嫌いし、女主人公のことを「親から見捨てられた子」と虐げていた。

女主人公は衣食住もままならないうえ、実家で共に生活する柔順な性格で出来の良い従姉妹と常に比較され、どんどん反抗的な性格に育っていった。

流行り病になっても医者に診せてもらえず、もうすぐ死にそうだからと、おばあさんのようなぼろぼろの衣服を与えられ、田舎のあばら家に隔離されていた時に、逃走中の犯人を追っていた男主人公の将軍(ウー・レイ)と運命の出会いをする。

自分は親に見放され、育っててもらう価値もない人間だと思い込んでいる女主人公と、親子関係が上手くいかず父親のことを毛嫌いし、目も合わせようとしない男主人公。

男主人公は一目で女主人公に惹かれるが、女主人公には好きな男性がいて駆け落ちをもくろんでいた。

女主人公は、「自分はただ好きな人と結婚をしたいだけ」だと訴えるが、家と家の格式を大切にする時代では、二人が思い合っているだけでは結婚はできない。

女主人公からしてみれば、相手から好きだと言われるのは自分が認められた様で嬉しい。だが、まだ若い女主人公は、自分の感じている「好き」という感情が、「愛」なのかと聞かれたら、どうかは分からず、結婚したいのか、自由になりたいだけなのか?と、疑問を持ち始める。

愛着障害の人は、子どものころから「愛」を受けていないので、人から「愛している」と、言われた時に「愛」をどう受け取ったらよいのかが分からない。

その「受け取った愛」を相手にどう返したら良いのかが分からなくなり、嫌われるのが怖くて自分の方から逃げ出してしまうこともある。

場合によっては「愛」を受け取るだけ受け取って返すことを知らず、もっともっと「愛」を欲しいと要求し過ぎて相手を困惑させてしまう人もいる。

人から褒められたり、認められたりすることは心地よいのでもっとして欲しいが、自分が好きな人の愛は美しく見えて、自分が好きでは無い人からの愛は醜いものに感じて毛嫌いする。

このドラマでは、若い2人が「愛することとは何か」を手探りで探しながら成長し、愛着障害を克服して行く過程が、あたかも愛着障害のカウンセリングのように自然な形で織り込まれている。

このドラマのように10年ほどかけてゆっくり困難に打ち勝つ恋愛を経験できれば、カウンセリングを受けなくても愛着障害を克服することが出来るかもしれないが、現代の若者は、最初から親子関係が上手くいっている人を見つけて、短期決戦で恋愛を済ませ、結婚まで持って行きたい傾向があるように思う。

恋愛中に交際相手の親子関係や心理面の修復を考えてくれる時間は少ない。むしろメンタルが安定していないのが相手に悟られると逃げられてしまうので、話さないようにしている人もいる。

結婚までは順調に進んだとしても、愛着障害を克服していなければ、子育て期間中に自分の子供時代を思い返して我が子と比較し、不満が爆発してしまうかもしれない。

とは言え、結婚前の恋愛期間は人生でもっとも幸せな時期なので、愛着障害を克服して自信を持って人を愛し、心ゆくまで恋愛を楽しんでいただきたい。